日課のランニングを一時間もはやく切り上げて帰宅したサムを、ジェームズの心底不思議そうな顔が出迎えた。
「トラブルか?」
「昨日、新しいランニングシューズ買ったろ? あれが靴擦れしてさ」
「ああ、なるほど」
ジェームズはひとまずほっとした顔で笑い、患部をたしかめるようにしゃがみこんだ。「こりゃひどい」と唸る声を聞き、サムもうんざりとした声で答える。
「最悪だ。タクシーで帰ってくりゃよかった」
「手当てしようか?」
「頼む」
オーケイ、と立ち上がったジェームズに見送られてバスルームに向かい、まずはシャワーで患部を洗った。右足が特にひどいと思っていたが、左のかかとにもうっすら血がにじんでいる。あらかた流し終え、バスタブの縁に腰掛けて一息ついたところでようやく救急セットを携えたジェームズが顔を覗かせた。
「おせえよ」
「いや、意外と見つかんなくてさ……」
「お前が毎回適当なとこ置くからだろ」
「悪かったって」
ちっとも悪びれずに言ったジェームズが、雑な手つきで救急セットをかき回す。ついつい出そうになる小言を制止するように、ようやく見つけたらしい消毒液を投げつけられた。
「怪我人はおとなしく。な?」
「はいはい」
言われたとおりおとなしく座っていると、軽く開いた脚のあいだにジェームズがひざまづいた。差し出された脱脂綿に消毒液を垂らしてやったあとは手出しも口出しもせず、彼の好きなようにさせてやる。
「――ほら、できたぜ」
たかだか絆創膏を貼ったくらいのものだが、ジェームズはいたく満足そうだった。こういうとき、彼の大きな瞳は何にも勝って雄弁だ。その顔が手放しに可愛らしかったので、サムも珍しく素直になった。
「助かったよ」
てっきりすぐに解放されると思っていたサムだったが、ジェームズの手はいつまでもサムの右足を抱えている。次第に疑念がつのり、様子をうかがうように何度か足に力をこめた。――動かない。まったく動かなかった。
「……おまえ、足の指も長いんだな」
ジェームズが意味深に笑い、サムの足裏をつつ、と指でなぞる。ぎゃあ、と声をあげたサムを、愉快そうな両目がしてやったりとばかりに見上げた。サムの頭に嫌な予感が走る。見下ろす笑い顔の裏に、見慣れた欲求のにおいを感じたからだ。
「おい、よせって」
「くすぐったい?」
爽やかな朝のバスルームにはふさわしくない顔で笑うジェームズを心底憎たらしく思う。意趣返しに、捕らわれていないほうの足で彼の肩を押した。案の定サムのささやかな抵抗は無駄に終わり、待ってましたと言わんばかりにその左足を捕らえたジェームズの顔がいっそう愉快そうに輝く。
「馬鹿、離せって」
「いいだろ。ランニングの代わりにさ」
「まだ朝だぞ」
「関係ない。おとといだって朝からヤったろ?」
「あれもお前が……」
サムの反論を封じるように、ジェームズの唇が足裏をなぞる。くすぐったさと驚きに体が跳ねた。それに気をよくしたのか、おもむろに開いた唇がサムの足指をぱくりと咥える。
「お前……! この、馬鹿っ」
慌てるサムを、笑みのかたちに細められた青い瞳が見上げた。キャンディでも舐めるように舌を這わされ、くすぐったさがもどかしい熱に変わる。それを察したのか、ジェームズの舌使いから一切の遠慮がなくなった。
小指から順に指のあいだまで丁寧に舐めあげられ、それが人差し指に達するころにはもう限界が近づいていた。ジェームズのほうもすっかり興奮しているようで、兆したものがスウェットの前を押し上げている。目だけで限界を伝えあい、ジェームズがゆっくりとサムの拘束を解いた。
「やっとその気になった」
「うるせえ」
自由になった足でジェームズの股間をなぞる。ちょっとした仕返しのつもりだったが、ジェームズはうっとりと感じ入ったような声を漏らした。どうやら彼自身も思った以上に興奮していたらしい。
「変態かよ」
詰るように言うと、ジェームズも負けじとサムのそれを服の上から揉んだ。サムの喉から短いうめきが漏れる。
「お互い様じゃねえか」
サムの痴態を鼻で笑ったジェームズが、ランニングパンツの裾を意味深に引いた。意図を察して腰を浮かすと下着ごと一気に引き下ろされ、サムの下半身が露になる。弾かれるように天をついたそれに、ジェームズが「ワオ」と感嘆の声を漏らした。
「元気だな」
いいことだ、と続けたジェームズが、その柔らかな唇でサムの先端を撫でる。まるでわんぱく盛りの子供の額にキスでも落とすような仕草だ。そう思ったのもつかの間、熱い粘膜が吸い付くように陰茎を包み、サムは喉を鳴らしてその衝撃に耐えた。
ジェームズの頭がゆっくりと前後にうごき、括れたところに差し掛かるたび唇がきゅうとすぼめられる。筋ばった裏側は舌で、固さを増す陰嚢は右手で刺激され、その巧みさにサムはただ身を任せるほかなかった。
「あー、やべえ……」
そんなサムの様子を伺うように、伏せられていた目がくるりと上向く。これまで一体どんな女と寝てきたんだ、と言いたくなるほど見事な手管だった。
「その顔。まじ、やめろって……」
逃げるようにジェームズの頭を掴み、両手で柔らかなブルネットをかき分けた。地肌をなぞられる感触が心地いいのか、鼻にかかった甘い吐息がサムの下生えを湿らせる。たまらず奥歯を噛みしめ、押し付けるようにジェームズの頭を引き寄せた。限界いっぱいに奥をつくと、ひときわ柔らかな粘膜が先端を擦り、ますますサムを昂らせる。そのまましばらく自分勝手に彼の口を使っていると、苦しげにうなったジェームズがサムのふくらはぎを引っ掻いた。手を離した途端に咳き込みだし、潤んだ瞳がサムを睨む。
「――っは、この、調子乗んなっつうの……」
「お前が煽ったんだろ」
「まあ、ね」
そう言って口角をあげたジェームズは、二人分の体液で湿った上唇をゆっくりと舐めた。普段からよく見るクセだが、いまはそこに明確な意図がこめられている。サムは窮屈に体を折り曲げ、誘うようにぬめるそこへ思い切り噛みついた。
「続き、するだろ……?」
息継ぎのあいまにジェームズが言う。あたりまえだろ、と返すかわりに、サムは無言で深い口付けを返した。
「トラブルか?」
「昨日、新しいランニングシューズ買ったろ? あれが靴擦れしてさ」
「ああ、なるほど」
ジェームズはひとまずほっとした顔で笑い、患部をたしかめるようにしゃがみこんだ。「こりゃひどい」と唸る声を聞き、サムもうんざりとした声で答える。
「最悪だ。タクシーで帰ってくりゃよかった」
「手当てしようか?」
「頼む」
オーケイ、と立ち上がったジェームズに見送られてバスルームに向かい、まずはシャワーで患部を洗った。右足が特にひどいと思っていたが、左のかかとにもうっすら血がにじんでいる。あらかた流し終え、バスタブの縁に腰掛けて一息ついたところでようやく救急セットを携えたジェームズが顔を覗かせた。
「おせえよ」
「いや、意外と見つかんなくてさ……」
「お前が毎回適当なとこ置くからだろ」
「悪かったって」
ちっとも悪びれずに言ったジェームズが、雑な手つきで救急セットをかき回す。ついつい出そうになる小言を制止するように、ようやく見つけたらしい消毒液を投げつけられた。
「怪我人はおとなしく。な?」
「はいはい」
言われたとおりおとなしく座っていると、軽く開いた脚のあいだにジェームズがひざまづいた。差し出された脱脂綿に消毒液を垂らしてやったあとは手出しも口出しもせず、彼の好きなようにさせてやる。
「――ほら、できたぜ」
たかだか絆創膏を貼ったくらいのものだが、ジェームズはいたく満足そうだった。こういうとき、彼の大きな瞳は何にも勝って雄弁だ。その顔が手放しに可愛らしかったので、サムも珍しく素直になった。
「助かったよ」
てっきりすぐに解放されると思っていたサムだったが、ジェームズの手はいつまでもサムの右足を抱えている。次第に疑念がつのり、様子をうかがうように何度か足に力をこめた。――動かない。まったく動かなかった。
「……おまえ、足の指も長いんだな」
ジェームズが意味深に笑い、サムの足裏をつつ、と指でなぞる。ぎゃあ、と声をあげたサムを、愉快そうな両目がしてやったりとばかりに見上げた。サムの頭に嫌な予感が走る。見下ろす笑い顔の裏に、見慣れた欲求のにおいを感じたからだ。
「おい、よせって」
「くすぐったい?」
爽やかな朝のバスルームにはふさわしくない顔で笑うジェームズを心底憎たらしく思う。意趣返しに、捕らわれていないほうの足で彼の肩を押した。案の定サムのささやかな抵抗は無駄に終わり、待ってましたと言わんばかりにその左足を捕らえたジェームズの顔がいっそう愉快そうに輝く。
「馬鹿、離せって」
「いいだろ。ランニングの代わりにさ」
「まだ朝だぞ」
「関係ない。おとといだって朝からヤったろ?」
「あれもお前が……」
サムの反論を封じるように、ジェームズの唇が足裏をなぞる。くすぐったさと驚きに体が跳ねた。それに気をよくしたのか、おもむろに開いた唇がサムの足指をぱくりと咥える。
「お前……! この、馬鹿っ」
慌てるサムを、笑みのかたちに細められた青い瞳が見上げた。キャンディでも舐めるように舌を這わされ、くすぐったさがもどかしい熱に変わる。それを察したのか、ジェームズの舌使いから一切の遠慮がなくなった。
小指から順に指のあいだまで丁寧に舐めあげられ、それが人差し指に達するころにはもう限界が近づいていた。ジェームズのほうもすっかり興奮しているようで、兆したものがスウェットの前を押し上げている。目だけで限界を伝えあい、ジェームズがゆっくりとサムの拘束を解いた。
「やっとその気になった」
「うるせえ」
自由になった足でジェームズの股間をなぞる。ちょっとした仕返しのつもりだったが、ジェームズはうっとりと感じ入ったような声を漏らした。どうやら彼自身も思った以上に興奮していたらしい。
「変態かよ」
詰るように言うと、ジェームズも負けじとサムのそれを服の上から揉んだ。サムの喉から短いうめきが漏れる。
「お互い様じゃねえか」
サムの痴態を鼻で笑ったジェームズが、ランニングパンツの裾を意味深に引いた。意図を察して腰を浮かすと下着ごと一気に引き下ろされ、サムの下半身が露になる。弾かれるように天をついたそれに、ジェームズが「ワオ」と感嘆の声を漏らした。
「元気だな」
いいことだ、と続けたジェームズが、その柔らかな唇でサムの先端を撫でる。まるでわんぱく盛りの子供の額にキスでも落とすような仕草だ。そう思ったのもつかの間、熱い粘膜が吸い付くように陰茎を包み、サムは喉を鳴らしてその衝撃に耐えた。
ジェームズの頭がゆっくりと前後にうごき、括れたところに差し掛かるたび唇がきゅうとすぼめられる。筋ばった裏側は舌で、固さを増す陰嚢は右手で刺激され、その巧みさにサムはただ身を任せるほかなかった。
「あー、やべえ……」
そんなサムの様子を伺うように、伏せられていた目がくるりと上向く。これまで一体どんな女と寝てきたんだ、と言いたくなるほど見事な手管だった。
「その顔。まじ、やめろって……」
逃げるようにジェームズの頭を掴み、両手で柔らかなブルネットをかき分けた。地肌をなぞられる感触が心地いいのか、鼻にかかった甘い吐息がサムの下生えを湿らせる。たまらず奥歯を噛みしめ、押し付けるようにジェームズの頭を引き寄せた。限界いっぱいに奥をつくと、ひときわ柔らかな粘膜が先端を擦り、ますますサムを昂らせる。そのまましばらく自分勝手に彼の口を使っていると、苦しげにうなったジェームズがサムのふくらはぎを引っ掻いた。手を離した途端に咳き込みだし、潤んだ瞳がサムを睨む。
「――っは、この、調子乗んなっつうの……」
「お前が煽ったんだろ」
「まあ、ね」
そう言って口角をあげたジェームズは、二人分の体液で湿った上唇をゆっくりと舐めた。普段からよく見るクセだが、いまはそこに明確な意図がこめられている。サムは窮屈に体を折り曲げ、誘うようにぬめるそこへ思い切り噛みついた。
「続き、するだろ……?」
息継ぎのあいまにジェームズが言う。あたりまえだろ、と返すかわりに、サムは無言で深い口付けを返した。
