ハロウィンのときもこんな話を書いた気がします
私が書くクリセバは季節の節目にコスプレ(?)セックスをしなければならない宿命にあるらしいです
私が書くクリセバは季節の節目にコスプレ(?)セックスをしなければならない宿命にあるらしいです
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「寂しいな、これが夏の思い出なんてさ」
クリスがぶうぶうと唇を尖らせながら言う。セバスチャンはかけていたサングラスを額へ乗せて振り返り「楽しくない?」と笑った。
「どちらかと言えば虚しい」
「夢がないなあ」
「そっちこそっ。俺は海に行きたいって言ったんだ! それが、なんで俺んちのベランダになるんだよ……っ!」
演技がかったクリスの駄々を聞きながら、セバスチャンは暇そうに脚をばたつかせ、ぎしぎしとビーチチェアを軋ませた。眼前には大都会ニューヨークの摩天楼が広がっており、これはこれで悪くない光景だ。背後にあるのは通い慣れたクリスの部屋で、地面は砂浜ではなく打ちっぱなしのコンクリートなのだが。
「それに関してはスケジュール的に無理だって結論が出たろ」
にべもないセバスチャンの返事に、クリスの肩ががっくりと落ちた。
「……夢がないなあ」
そうやって文句を言いながら、クリスもセバスチャンが用意したアロハシャツとハーフパンツを身に着け、きっちりサングラスまでかけている。足元はビーチサンダルだ。ベランダにはビーチチェアが二脚とちいさなパラソルまである。さしものセバスチャンもここまでしろとは言っていないから、クリスだって多少は乗り気だったろうに。
「カクテルでも作ろうか?」
機嫌取りのためにそう申し出ると、クリスは相変わらず唇を尖らせながら「モヒートが飲みたい」と現金なことを言った。
「ミントあるの?」
「ない。買ってきて」
「この格好で? やだなあ」
「君が用意したんだろ!」
そうだっけ、としらばっくれるセバスチャンを、クリスがじっとりとした目で睨む。その足元を、飼い主とお揃いのサングラスをかけたドジャーがくるくると回った。彼が着ている犬用のアロハシャツは、セバスチャンが買ったものではない。クリスの仕業だ。やっぱり結構楽しんでるじゃないか。
「なあ、音楽でもかけない?」
「……モヒートは」
「その前に、楽しもうよ。ね?」
そう言って誘うように首を傾げると、素直じゃない飼い主のかわりに、ドジャーがくうくうと喉を鳴らす。手を伸ばしてそのちいさな頭を撫でてやりながら、反対の手でスマートフォンの画面を叩いた。スピーカーから聴きつけないダンスミュージックを流し、その片手間にカクテルのレシピを検索する。
「――あ、ソルティドッグならすぐ作れそうだ」
スノースタイルは無理だけど、とレシピが載った画面を見せると、クリスの渋面もようやく僅かにほぐれだした。もとから飲むつもりだったらしい。キッチンカウンターにずらりと並んだリキュールのボトルやフルーツの山は、これもクリスが事前に用意したものだ。素直になれって、と内心で苦笑をこぼしながらドジャーを連れて立ち上がり、ぞろぞろとカウンターへ向かう。
「……確か、どっかにジューサーがあったはずだな」
ついでに後ろからクリスも付いてきて、そう言うなりがちゃがちゃと戸棚をあさりはじめた。その横顔はもうすっかり楽しそうだ。音楽にあわせて体を揺らしながら、二人並んでキッチンに立つ。
棚の奥から出てきた手絞り式のジューサーは、バーテンダーが使うような本格仕様だった。クリスいわく、なんで買ったのかは思い出せないがモノはいいそうだ。金属製のフィルターのうえにセバスチャンが半分に切ったグレープフルーツを乗せ、クリスがぐっとハンドルを押す。
「これ、結構重労働だぞ」
「頑張れ、頑張れ」
「他人事だと思って……」
恨めし気な顔をしたクリスが、自棄になったようにハンドルへ体重をかけた。勢いあまって受け皿から溢れた果汁がばしゃっと弾け、二人の顔をべとべとに汚す。
「……クゥリス」
今度はセバスチャンが恨めし気な顔でクリスを睨んだ。
「ごめんごめん、やりすぎた」
「目に入っちゃったじゃん」
「え、うそ」
慌てたクリスが、セバスチャンの目元を覗きこむように顔を近づける。その隙をついて、盗むようにさっと唇を塞いだ。
「……うそだよ」
そう言って、にんまりと笑う。それから、クリスの頬を伝う果汁をぺろりと舐めた。呆気にとられているクリスを見上げながら、顎と首筋にも順番に唇を落としていく。グレープフルーツの苦味と、肌に滲んだ汗の味が舌の上で混じり、セバスチャンは「夏だなあ」と唐突にそう思った。夏に味があったら、きっとこんなふうな味がするに違いない。
「……もしかして、俺、誘われてる?」
ジューサーのハンドルを握ったまま、クリスがぽつりと言った。セバスチャンは吹き出すように笑い、もう一度唇にキスを見舞う。
「誘ってる」
「……ソルティドッグは」
「その前に、楽しもうよ」
夏の思い出にさ、と続けたセバスチャンの腰を、クリスの腕がぐいと強く引き寄せる。そして、ようやく心底楽しそうに笑った。
「悪くないかも」
でしょ、と言いかけた唇を塞がれ、額のうえのサングラスを奪われる。そのまま素肌をまさぐられながら、最高だな、とセバスチャンは思った。最高に馬鹿げていて、最高に楽しい。ビーチで海を眺めるだけが夏じゃないのだ。部屋のなかでビーチサンダルを履いたり、ベランダにビーチチェアとパラソルを置いたり、埃をかぶっていたジューサーを引っ張り出したり、キッチンでセックスしたりするのも夏だ。馬鹿げた格好をして馬鹿げた真似をすれば、それはもう立派な夏なのだ。そうに決まってる。
クリスがぶうぶうと唇を尖らせながら言う。セバスチャンはかけていたサングラスを額へ乗せて振り返り「楽しくない?」と笑った。
「どちらかと言えば虚しい」
「夢がないなあ」
「そっちこそっ。俺は海に行きたいって言ったんだ! それが、なんで俺んちのベランダになるんだよ……っ!」
演技がかったクリスの駄々を聞きながら、セバスチャンは暇そうに脚をばたつかせ、ぎしぎしとビーチチェアを軋ませた。眼前には大都会ニューヨークの摩天楼が広がっており、これはこれで悪くない光景だ。背後にあるのは通い慣れたクリスの部屋で、地面は砂浜ではなく打ちっぱなしのコンクリートなのだが。
「それに関してはスケジュール的に無理だって結論が出たろ」
にべもないセバスチャンの返事に、クリスの肩ががっくりと落ちた。
「……夢がないなあ」
そうやって文句を言いながら、クリスもセバスチャンが用意したアロハシャツとハーフパンツを身に着け、きっちりサングラスまでかけている。足元はビーチサンダルだ。ベランダにはビーチチェアが二脚とちいさなパラソルまである。さしものセバスチャンもここまでしろとは言っていないから、クリスだって多少は乗り気だったろうに。
「カクテルでも作ろうか?」
機嫌取りのためにそう申し出ると、クリスは相変わらず唇を尖らせながら「モヒートが飲みたい」と現金なことを言った。
「ミントあるの?」
「ない。買ってきて」
「この格好で? やだなあ」
「君が用意したんだろ!」
そうだっけ、としらばっくれるセバスチャンを、クリスがじっとりとした目で睨む。その足元を、飼い主とお揃いのサングラスをかけたドジャーがくるくると回った。彼が着ている犬用のアロハシャツは、セバスチャンが買ったものではない。クリスの仕業だ。やっぱり結構楽しんでるじゃないか。
「なあ、音楽でもかけない?」
「……モヒートは」
「その前に、楽しもうよ。ね?」
そう言って誘うように首を傾げると、素直じゃない飼い主のかわりに、ドジャーがくうくうと喉を鳴らす。手を伸ばしてそのちいさな頭を撫でてやりながら、反対の手でスマートフォンの画面を叩いた。スピーカーから聴きつけないダンスミュージックを流し、その片手間にカクテルのレシピを検索する。
「――あ、ソルティドッグならすぐ作れそうだ」
スノースタイルは無理だけど、とレシピが載った画面を見せると、クリスの渋面もようやく僅かにほぐれだした。もとから飲むつもりだったらしい。キッチンカウンターにずらりと並んだリキュールのボトルやフルーツの山は、これもクリスが事前に用意したものだ。素直になれって、と内心で苦笑をこぼしながらドジャーを連れて立ち上がり、ぞろぞろとカウンターへ向かう。
「……確か、どっかにジューサーがあったはずだな」
ついでに後ろからクリスも付いてきて、そう言うなりがちゃがちゃと戸棚をあさりはじめた。その横顔はもうすっかり楽しそうだ。音楽にあわせて体を揺らしながら、二人並んでキッチンに立つ。
棚の奥から出てきた手絞り式のジューサーは、バーテンダーが使うような本格仕様だった。クリスいわく、なんで買ったのかは思い出せないがモノはいいそうだ。金属製のフィルターのうえにセバスチャンが半分に切ったグレープフルーツを乗せ、クリスがぐっとハンドルを押す。
「これ、結構重労働だぞ」
「頑張れ、頑張れ」
「他人事だと思って……」
恨めし気な顔をしたクリスが、自棄になったようにハンドルへ体重をかけた。勢いあまって受け皿から溢れた果汁がばしゃっと弾け、二人の顔をべとべとに汚す。
「……クゥリス」
今度はセバスチャンが恨めし気な顔でクリスを睨んだ。
「ごめんごめん、やりすぎた」
「目に入っちゃったじゃん」
「え、うそ」
慌てたクリスが、セバスチャンの目元を覗きこむように顔を近づける。その隙をついて、盗むようにさっと唇を塞いだ。
「……うそだよ」
そう言って、にんまりと笑う。それから、クリスの頬を伝う果汁をぺろりと舐めた。呆気にとられているクリスを見上げながら、顎と首筋にも順番に唇を落としていく。グレープフルーツの苦味と、肌に滲んだ汗の味が舌の上で混じり、セバスチャンは「夏だなあ」と唐突にそう思った。夏に味があったら、きっとこんなふうな味がするに違いない。
「……もしかして、俺、誘われてる?」
ジューサーのハンドルを握ったまま、クリスがぽつりと言った。セバスチャンは吹き出すように笑い、もう一度唇にキスを見舞う。
「誘ってる」
「……ソルティドッグは」
「その前に、楽しもうよ」
夏の思い出にさ、と続けたセバスチャンの腰を、クリスの腕がぐいと強く引き寄せる。そして、ようやく心底楽しそうに笑った。
「悪くないかも」
でしょ、と言いかけた唇を塞がれ、額のうえのサングラスを奪われる。そのまま素肌をまさぐられながら、最高だな、とセバスチャンは思った。最高に馬鹿げていて、最高に楽しい。ビーチで海を眺めるだけが夏じゃないのだ。部屋のなかでビーチサンダルを履いたり、ベランダにビーチチェアとパラソルを置いたり、埃をかぶっていたジューサーを引っ張り出したり、キッチンでセックスしたりするのも夏だ。馬鹿げた格好をして馬鹿げた真似をすれば、それはもう立派な夏なのだ。そうに決まってる。
