閑話休題終わり
きりきり頑張ります
きりきり頑張ります
■
ヘッドボードに背中を預け、ぼんやりと事後の余韻に浸る。
ジェームズはシーツに腹這いになり、サムのほうへ尻を向けて手に入れたばかりのスマートフォンを弄っていた。子供向けの簡単なタイピングゲームをしているようだ。以前あんまり入力が遅いのでからかったら、ずいぶんとそれを根に持っているらしい。
「……寝ねえの?」
自分も枕の横に置いていたスマートフォンを取って時間を確かめ、重い瞼をぐいと擦った。いまからシャワーを浴びたら、出てくる頃には日付が変わっているだろう。
ジェームズの白い背中がねじれ、肩甲骨の下のくぼみに濃い色の影が差す。金属の肩越しにぱっちりと開いた青い瞳が覗いた。
「まだはやい」
つんと尖った上唇が、その表情をずいぶんと子供っぽく見せる。けれど、ほんとうはサムよりもずっと年嵩の男だ。ちょっとやそっとじゃない。ほんとうならすれ違うこともなく一生を終えるくらい、別の時代を生きていた二人だった。
そんな男が今夜は一段と子供じみて見え、しかもサムだってまんざらではないのだから可笑しかった。
「ゲームは一日一時間だぞ」
そう言って口元を緩め、右足の爪先で目の前の白い脇腹をつつく。ごつごつとした筋肉のうえに、薄っすらとのった脂肪の感触がある。ちょっと頑張れば足の指でも摘まめそうなくらいには柔らかい。
濃い色をしたサムの爪先が、ジェームズの白い脇腹をくすぐるようになぞった。反射的に身をよじったジェームスが、きらめくような青い瞳を挑発的に眇めてサムを睨む。
「……くすぐったいんだけど」
咎めるような言葉と、反面、愉快そうな表情。どちらを信じるべきかはすぐに分かった。反撃のために伸ばされた手をかいくぐり、爪先でぎゅうと白い脇腹をつねる。すぐに「ぎゃっ」と短い悲鳴があがった。
「このやろっ……!」
口汚い罵声を吐きながら、けれどその顔はずいぶんと楽しそうだった。退屈していたのか、まだじゃれ足りなかったのか。顔や雰囲気は猫に似ているジェームズだが、その本質はどちらかと言えば犬に近い。他人に構うのも構われるのも好きで、孤独や退屈がなにより嫌いな男だ。
ジェームズの視線を独占していたスマートフォンは、ぐちゃぐちゃになったシーツのどこかに隠れてしまった。もしかすれば腹のしたに敷かれてるかも。
呆気なく捕まったサムの右足に、ジェームズの唇がそっと触れた。くいとあがった口角と、きらきらしい瞳がサムの視線を捉える。
「……寝ねえの?」
聞いてはみたものの、答えはほとんど分かっていた。ねじれていた上半身がくんと伸びあがり、サムの眼前に真っ白な背中が広がる。そのまま振り返ったジェームズは、ベッドのスプリングをおおきく軋ませながらサムの両足を跨いだ。そしてまた、上唇を尖らせる。
「まだはやい」
はやくない、と言おうとした口が塞がれ、サムの背中はずるずるとシーツのうえに沈んだ。
ジェームズはシーツに腹這いになり、サムのほうへ尻を向けて手に入れたばかりのスマートフォンを弄っていた。子供向けの簡単なタイピングゲームをしているようだ。以前あんまり入力が遅いのでからかったら、ずいぶんとそれを根に持っているらしい。
「……寝ねえの?」
自分も枕の横に置いていたスマートフォンを取って時間を確かめ、重い瞼をぐいと擦った。いまからシャワーを浴びたら、出てくる頃には日付が変わっているだろう。
ジェームズの白い背中がねじれ、肩甲骨の下のくぼみに濃い色の影が差す。金属の肩越しにぱっちりと開いた青い瞳が覗いた。
「まだはやい」
つんと尖った上唇が、その表情をずいぶんと子供っぽく見せる。けれど、ほんとうはサムよりもずっと年嵩の男だ。ちょっとやそっとじゃない。ほんとうならすれ違うこともなく一生を終えるくらい、別の時代を生きていた二人だった。
そんな男が今夜は一段と子供じみて見え、しかもサムだってまんざらではないのだから可笑しかった。
「ゲームは一日一時間だぞ」
そう言って口元を緩め、右足の爪先で目の前の白い脇腹をつつく。ごつごつとした筋肉のうえに、薄っすらとのった脂肪の感触がある。ちょっと頑張れば足の指でも摘まめそうなくらいには柔らかい。
濃い色をしたサムの爪先が、ジェームズの白い脇腹をくすぐるようになぞった。反射的に身をよじったジェームスが、きらめくような青い瞳を挑発的に眇めてサムを睨む。
「……くすぐったいんだけど」
咎めるような言葉と、反面、愉快そうな表情。どちらを信じるべきかはすぐに分かった。反撃のために伸ばされた手をかいくぐり、爪先でぎゅうと白い脇腹をつねる。すぐに「ぎゃっ」と短い悲鳴があがった。
「このやろっ……!」
口汚い罵声を吐きながら、けれどその顔はずいぶんと楽しそうだった。退屈していたのか、まだじゃれ足りなかったのか。顔や雰囲気は猫に似ているジェームズだが、その本質はどちらかと言えば犬に近い。他人に構うのも構われるのも好きで、孤独や退屈がなにより嫌いな男だ。
ジェームズの視線を独占していたスマートフォンは、ぐちゃぐちゃになったシーツのどこかに隠れてしまった。もしかすれば腹のしたに敷かれてるかも。
呆気なく捕まったサムの右足に、ジェームズの唇がそっと触れた。くいとあがった口角と、きらきらしい瞳がサムの視線を捉える。
「……寝ねえの?」
聞いてはみたものの、答えはほとんど分かっていた。ねじれていた上半身がくんと伸びあがり、サムの眼前に真っ白な背中が広がる。そのまま振り返ったジェームズは、ベッドのスプリングをおおきく軋ませながらサムの両足を跨いだ。そしてまた、上唇を尖らせる。
「まだはやい」
はやくない、と言おうとした口が塞がれ、サムの背中はずるずるとシーツのうえに沈んだ。
