078 アラーム(クリセバ)

ちょいエロ
エロありだとついつい長くなっちゃいますね~
工程(?)の描写が必須なので……
 ベッドから這い出ようとする恋人の腰に抱き着き、その背中に鼻先を押し付けた。
「……クリィス、ずいぶんと躾の悪い犬だな。ハウスだ」
 笑みを含んだきつい揶揄。まだ目覚めきっていないのか、掠れた声がひどくセクシーだ。ノーと言う代わりに顔を左右に振り、Tシャツの裾へ頭を突っこんだ。寝起きの汗ばんだ肌に唇を寄せ、その滑らかな肌触りを楽しむ。
「もう出ないと。君は半日オフだっけ?」
 クリスを背負ったままベッドの縁に腰掛けたセバスチャンは、サイドボードに手を伸ばしながら大きなあくびをひとつこぼした。Tシャツ越しに、スマートフォンを掴む手のひらが見える。
「その通り。セブは何時入りだっけ?」
「十時。あと二時間で迎えが来る」
「ここに?」
 首を横に振ったセバスチャンは、慌てた声で「俺んち」と返し、後ろ手でぎこちなくクリスの頭を撫でた。ここはクリスの部屋なので、そうなると一度彼の自宅へ帰らなければならない。それを見越したうえでの「もう出ないと」なのだろう。
「朝メシは?」
「うちで食うよ。今月からまたササミ生活だからね」
「……ワオ、ご愁傷様」
「そう思うんならその手を放せよ。シャワー浴びないと」
 セバスチャンはもう一度大きなあくびをこぼし、つられたクリスもあくびを噛み殺した。整髪料やデオドラントの香りを纏っていない、真っさらなセバスチャンの匂いが鼻腔を満たす。
 朝だから、という言い訳が通用するかどうか分からないが。
「……ねえ、セブ」
「言いたいことは分かるよ。元気そうで何よりだ」
「何分ならいい?」
「五分」
 スマートフォンをベッドに放ったのとほぼ同時に、セバスチャンが上半身をくるりと捻った。Tシャツの中で揉みくちゃにされたクリスの後頭部を、火照った手のひらが撫でる。
「なんとかしてあげるから、顔を見せて」
 はい、と素直に答え、目の前のなだらかな六つのふくらみに別れを告げた。セバスチャンのTシャツからもぞもぞと頭を出し、向かい合うように上体を起こす。
「……ごめん、勃っちゃった」
「オーケー。五分だぞ、それ以上は君の右手に何とかしてもらえ」
「ありがとうセバスチャン、愛してるよ」
「見りゃわかる」
 セバスチャンは肩を竦めながらそう言うと、まだ半分ほどシーツに隠れているクリスの下半身を指差した。その指がそのままスウェットパンツのウエストへ伸び、緩んだゴムをぐいと引っ張る。
「ちゃんと座って」
 セバスチャンの叱咤に慌てて頷き、胡坐をかくように体を起こした。入れ替わるように床へおりたセバスチャンが、クリスの太ももを二度ほど叩く。
「脚」
 クリスはまた慌てて頷き、セバスチャンを跨ぐように両脚を床へおろした。クリスの脚のあいだに陣取ったセバスチャンが、次は「パンツ」と命じる。今度は頷く前に命令に従い、下着ごとスウェットを引き下げた。
 元気よく飛び出したクリスの半身を、セバスチャンが困ったように見下ろす。
「……昨日は何回したっけ?」
「三回、かな」
「四回だ」
 そうでしたっけ、と言いかけたクリスの言葉を遮るように、セバスチャンの唇がぱかりと開いた。そのまま言葉もなく飲み込まれた半身が、突然の刺激にぶるりと震える。
「――っ!」
 はやすぎる射精感をなんとかやり過ごそうと、腰回りにぐっと力をこめる。セバスチャンの眠たげな瞳が愉快そうにクリスを見上げた。
「やばい、もうイキそう……」
 そう言いながら眼下にある寝ぐせ頭に両手を乗せ、跳ねた毛を整えるように撫でまわす。そのまま耳元をくすぐると、セバスチャンが抗議の代わりにクリスの先端を甘噛みした。
「いてっ」
「……ばか、俺まで勃ったらどうしてくれんの」
 遅刻確定だ、と膨れる頬をなだめるように擦り「ごめん」と眉を下げる。セバスチャンは返事の代わりに先端を吸い上げ、いたずらっぽく瞳を輝かせながらクリスを見上げた。
 手慰みの愛撫を封じられると、途端に快感をより強く感じはじめる。セバスチャンの舌が筋を這うだけで、クリスの腹筋は痙攣したように震えた。追いたてるように睾丸を触られると太腿が跳ね、爪先がくんと丸まる。それを面白がってか、セバスチャンの唇が笑みの形につり上がった。
「五分で足りそうだな」
 達する寸前のそれを一度吐き出したセバスチャンが、発射寸前のクリスを揶揄するように言った。ご機嫌な猫のように緩んだ唇から舌先だけ出し、まるでアイスキャンディを舐めるように、ペニスの根元から先端へと滑らせる。そのまま先端をくすぐるように刺激されると、クリスの腰はもどかしさにじくじくと熱を帯びた。
「ねえセブ、意地悪しないでよ……」
 わざと舌足らずにそうねだると、セバスチャンは「可愛こぶるな」と笑って再び大きく口を開いた。鼻先が湿った下生えに埋まるほど深く咥え込まれる。
「あっ、やば……っ!」
 ぐんと質量を増したそれが、ごつん、と上顎の奥を突き上げた。ざらりとした粘膜の感触にまた腰の奥が震える。セバスチャンは一瞬だけ嘔吐いたように呻き、けれどすぐ挑発的な視線をクリスに送った。
 大丈夫か、と余裕ぶった気遣いを口にしようとして、失敗した。セバスチャンの頭がぐっと引かれ、またすぐ深々と飲み込まれる。舌は裏側の筋にぴったりと這わされたまま、クリスだけが絶頂へと追い立てられた。
「いく、いくからっ、セブ……!」
 感極まって、押し殺した声で叫ぶ。
 その瞬間だった。
「……五分ぴったり、だな」
 そう言って、セバスチャンが笑う。その直後、場違いに明るい電子音が部屋じゅうに鳴り響いた。
「えっ?」
 呆気にとられて固まる思考回路とは裏腹に、下半身は待ちわびた解放感に脱力する。セバスチャンのスマートフォンは聞き慣れたメロディーでタイムリミットの訪れを告げ、セバスチャンは込み上げる笑いを必死に押し殺しながら肩を震わせていた。
「まじかよ……っ、まじで五分……!」
「ちょ、咥えたまま笑うなって……」
「だって……っ!」
 ぐったりと萎れたペニスを半分ほど咥えたままのセバスチャンの頭を引き剥がすように掴む。体液で汚れた唇はひどく淫靡なのに、けたたましく鳴り響くアラームと心底可笑しそうな表情がすべてを台無しにしていた。
「……いつの間に」
「気付かなかった?」
「うん」
 ふてくされながら頷いたクリスの頬に、セバスチャンの手のひらがぺたぺたと触れる。
「ごめんね。でも、遅刻しちゃまずいから」
 そう言いながら、片方の手はしっかりとスマートフォンへ伸びていた。慣れた手つきでアラームを止め、反対の手で口元を軽く拭う。そのまま立ち上がったセバスチャンの下半身にはまったく兆した気配もなく、クリスはひどく情けないような気分でその光景を眺めた。
「……俺もちょっとヤバかったけど、アラームで萎えた」
 クリスの視線に気付いたらしいセバスチャンが、肩を竦めながら笑う。そして、クリスの額へ唇を寄せながら続けた。
「仕事終わったら、また来るから」
 続き、よろしく。
 そのたった一言ですっかりいい気になれるのだから、我ながらなんとも単純だなあと思う。けれどクリスは、そんな自分が結構気に入っているのだった。多分、セバスチャンも。