ツイッターで頂いたやつ・その2

です!
長くなっちゃった……

#3・「あのわかんなくなるやつはやだ」

 あまり快くない感触が咥内を満たす。ねばついていて、青臭くて、生ぬるい感触。それを吐き出したモノがひくひくと震えながら固さを失っていく。何度味わっても不思議な感覚だった。どんな食べ物にも例えようのない食感だ。
「……また口にだした」
「ごめんって。だから止めろって言ったのに」
「だって」
 お互いぐちぐちと文句を言いあいながら、けれど顔は誰が見ても興奮しきっている。セックスの前のちょっとしたお遊びだ。喧嘩めいたやりとりだって、そのお遊びを盛り上げるいいスパイスになる。セバスチャンは言い訳の代わりにいっとう美しくいやらしい表情を作って笑い、舌で口の周りをぐるりと舐めた。ベッドのふちに腰掛けたクリスの膝をまたぐように乗り上げ、そのふっくらとした唇に顔を寄せる。
「――馬鹿!」
 これで何回目のチャレンジだろうか。嫌がるクリスがあんまり可愛いので、セバスチャンはなかなかこの悪趣味なチャレンジを諦めきれずにいた。仰け反るように上半身を引いたクリスをそのまま押し倒し、その鼻先にキスを落とす。それからべえっと舌を出してみせ、あやうく口の中のものが滴りそうになるまでじっくりと眼前に晒し続けた。
「だから、見せなくていいってば」
 クリスの手がセバスチャンの顔をぐいぐいと押す。それをうまくかわしながら舌を引っ込め、喉を鳴らしてねっとりとしたそれを飲み下した。
「ごちそうさま」
「……だから」
「なんだよ。俺が飲みたいんだからいいだろ」
 マリファナよりいいぜ、と嘯きながら、嫌がるクリスの目元に触れるだけのキスをする。そのまま右手をクリスの尻に伸ばし、きれいに洗われた窄みをノックするように何度かつついた。驚異的な美しさを誇るクリスの大臀筋がおびえたように痙攣する。今日はオッケーな日だな、と内心でほくそ笑んだセバスチャンは、一旦その右手を引っ込め、挿入に使う中指と薬指だけをおもむろに咥内へと収めた。まだ舌に纏わりついているクリスの体液を二本の指へ擦り付け、自分の唾液とあわせてじっくり湿らせていく。
「セブ、なあ、いれるの……?」
「だめ?」
 指を咥えたまま首を傾げると、クリスは曖昧な表情で眉をしかめながら「だめじゃないけど」と煮え切らない答えを返した。その続きを待ちながらずるりと指を抜き去り、再び入口へと指先を伸ばす。まだ固く締まったそこをほぐすように潤しながら、丸く整えた爪の先をゆっくりと侵入させた。クリスの右足が跳ねる。けれどそれ以上に思ったほどの抵抗がないとわかると、セバスチャンはそのまま侵入を続けた。
「あっ」
「痛かった?」
 クリスが無言で首を横に振る。セバスチャンは「よかった」と笑い、覚えたばかりの彼のいいところをめがけてそっと力を込めた。その腕を押しとどめるようにクリスの左手が伸びる。
「待っ……て」
「なんで」
 不満を隠してクリスを見ると、その顔はなんとも形状しがたい表情に歪んでいた。困っているような、焦っているような。けれど心底嫌そうなふうでもなく、行為を不快に感じているわけでもなさそうだった。不思議に思いながらも右手の動きを止めずにいると、クリスの顔はますます焦ったように歪んでいく。そのくせ中はどんどん熱を帯びてセバスチャンの指を飲み込んでいく。
「言ってくんなきゃわかんないよ、クリス」
 意地の悪い聞き方だっただろうか。そう思いながら、充血して大きさを増した性感帯を中指だけでひっかくように強くこねた。クリスの男らしい眉が苦しげに寄せられ、完璧なかたちの鼻筋に深い皺が刻まれる。そのあとで、うっとりとしたような鼻にかかった呻き声が漏らされた。セバスチャンの勘違いでなければだが、気持ちがいいのだろう。それも、かなり。
「クリィス? 英語忘れちゃった?」
 そう言って笑いながら、薬指も加えて攻め立てた。同時に左手で分厚い胸板を持ち上げるように揉む。すると、悔しげに噛みしめられた歯のあいまから切れ切れに喘ぎ声があがりはじめた。クソ、とか、この野郎、とかいうような、物騒なワードもいくつか聞こえてくる。そのなんともいえないささやかな抵抗が可笑しくて、左手の人差し指で弾くように胸元の尖りを刺激してやった。クリスの両目がかっと開く。
「待て、セブ、待って」
「だから、なんで待たなきゃいけないのか教えてってば」
 やっぱいれられんの嫌? と続けて問うと、クリスの瞳が気まずげにうろうろと宙をさまよった。気持ちいいの好きだろ、と追い打ちをかける。すると、好きだけど、と歯切れの悪い答えが返ってきた。それから、しばらくの沈黙。そしてキャプテン・トマトだ。何を照れているんだか知らないが、首まで真っ赤にして唇を引き結び、「言いたくない」と顔じゅうで訴えている。
「気持ちいいのは好きなのに、なんで嫌なの」
 言いなさい、と低い声で続け、ひときわ強く性感帯をこねた。そこに抜き差しするような動きをくわえ、本格的にクリスを追い込んでいく。言う、このクソったれ、言うから、チクショウ、と、時折可愛げのない罵倒を交えながらも、クリスはとうとう陥落したらしかった。
「気持ちいいのは好きだけど」
「けど?」
 その容赦のない追撃にもう一度「クソったれ」と吐き捨てたクリスは、顔を隠すように手の甲で口元を覆いながら、やっと聞こえるようなか細い声で唸るように言った。
「……あのわかんなくなるやつは、いやだ」
 わかんなくなるやつ。
「……君ってやつは!」
 なんでそんなに可愛いんだ! と大声で叫んだセバスチャンを、クリスがぎょっとしたように見上げる。セバスチャンはなりふり構わずクリスへ抱き着き、どうしようもなく膨れ上がった感情をぶつけるように彼のダークブラウンの髪を全力でかき混ぜた。そのまま生え際に鼻を埋め、ぐりぐりと顔を押し付けるようにしてキスを落とす。本当に申し訳ないんだけど、逆効果だ。逆効果だよクリス。そう胸の中だけで独り言ちながら。

おわり